夏雲を抜けて秋香る西方浄土へ

19日。阿弥陀岳ツアー。

17日以来猛暑も一段落し、秋の空気の入った朝はスタートから爽快な気分。
すすきの穂が満開に開いて花粉が乱舞する中を取り付きを目指して長いアプローチを辿る。
黒木の森の林床を覆う苔、実となった夏の野草、秋の花々。
マルバダケブキの群落が黄花を旺盛に開く尾根の取り付きからはひたすらの急登。
森林限界を抜けても一向に休ませてくれないガレの縁の踏み跡は夕立に洗われてガラガラにザレている。

それでも高度が上がれば雲海の上に浮かぶ中部山岳の数々。
逆巻く雲がドラマを演出する南八ヶ岳のピーク越しには富士を始め南アルプスの高峰。
西から北へと続く連嶺は御岳から始まり白馬で完結する北アルプスの勇姿達。
隣の尾根からは単独行の登山者の話し声や問いかけまでもが聞こえてくる。

主稜線に合して高度感のある岩尾根を越えると眼前にその名の通りの赤い岩肌を晒した赤岳が堂々と目に飛び込んでくる。

この好天下珍しく一人の登山者もいない山頂を独占してひたすらその展望をむさぼれば、時は瞬く間に過ぎてしまう。

登高中に単独行の青年に問いかけられた尾根を今度は自らのパーティーを伴ってゆっくりと下る。

既に薄暗くなった林間の苔の上にはミヤマモジズリの薄紫が薄明を纏って妖しく咲き競っていた。